私の研究は、デジタル・ヒューマニティーズ、計量文学研究、政策分析、そして人文学研究への大規模言語モデル(LLM)の応用にまたがっています。
文学研究では、日本・イギリス・ロシア文学を対象に、戦争、ジェンダー、感情、表象の問題を研究しています。日本の原爆文学に関する研究では、感情分析とコンピュータ支援型の精読を用いて、男性的・女性的な感情表現のあり方の違いを検討しています。また、モリー・パンター=ダウンズの戦時短編小説について、戦争の感情的な存在感を弱めたり、見えにくくしたりする語りの戦略に注目して研究してきました。その他にも、北極圏を舞台とする海洋・軍事文学、日本古典詩歌、日本におけるロシア文学の受容などを研究対象としてきました。
政策研究では、北極政治および公共言説に関するデータ駆動型研究に取り組んでいます。日本の国会審議、政策ネットワーク、専門家による論評、メディア言説を分析し、日本の「北極アイデンティティ」がどのように形成されてきたのか、また北極海航路、ガバナンス、国際協力に対する認識がどのように変化してきたのかを明らかにしています。また、2022年以降のロシアにおける北極言説と、アジア諸国との協力をより重視する傾向についての共同研究にも参加しています。これらのプロジェクトでは、データ収集、コーパス構築、統計分析、可視化、多言語テキスト分析の専門性を活かしています。
近年の研究では、計量文学研究における大規模言語モデルと生成AIの活用可能性を探っています。文学テキスト生成、文体分析、感情分類、その他の人文学向け自然言語処理(NLP)タスクにおいて、LLMをどのようにファインチューニングおよびカスタマイズできるかを研究しています。具体的には、パラメータ効率の高いファインチューニング、文学コーパスを用いた学習、言語モデルが文体的特徴をどの程度再現・一般化できるかといった点について実験を行っています。
方法論的には、デジタル・ヒューマニティーズのアプローチに、自然言語処理、コーパス言語学、統計モデリング、精読を組み合わせています。データ収集、クリーニング、アノテーション、モデル推論、評価、可視化までを含む、多言語対応の研究パイプラインを構築しています。私の目的は、計算的手法によって人文学的解釈を置き換えることではなく、パターンを発見し、研究上の主張を検証し、歴史的・文化的文脈に根差した人文学研究を支援することにあります。